我が家で新たに導入(?)した防災ラジオは短波(SW)、ワイドFMにも対応していて受信感度も良好でいい感じです。
なのですが、搭載されている(便利そうな)外部電源対応端子がDC3Vなんですよね。
世の中、ほぼほぼUSBのDC5Vが基本の時代なんですから(防災ラジオ用途という観点からも)これは不便ですよね。
■防災用ラジオのUSB外部電源アダプターを自作してみる
●使用するラジオ(AudioComm RAD-H320N)
今回使用するラジオはコレです。
オーム電機AudioComm ポータブルたんぱラジオRAD-H320N 03-1274 OHM シルバー - Amazon |
AM/SW(短波)/FM(ワイドFM対応)が受信可能な小型ラジオです。
価格はAmazonで1,255円でした。
今後、日本国内でAM放送を行う放送局はほぼほぼ無くなってしまうので、我が家の防災バッグに入れておく携帯ラジオを短波付きのラジオ(ワイドFMにも対応)にリニューアルしてみました。
・製品仕様(メーカ商品ページより)
- 受信周波数:
- AM…522~1710kHz
- FM…76~108MHz(ワイドFM(FM補完放送)対応)
- SW…3.9~18MHz(ラジオNIKKEI全6波対応)
- メーターバンド:
- SW1…75m(3.9~4.0MHz)
- SW2…49m(5.6~6.4MHz)
- SW3…41m(7.1~7.6MHz)
- SW4…31m(9.2~10.0MHz)
- SW5…25m(11.45~12.25MHz)
- SW6…21m(13.4~14.2MHz)
- SW7…19m(15.0~15.9MHz)
- SW8…16m(17.1~18.0MHz)
- アンテナ:
- FM・SW…ロッドアンテナ
- AM…内蔵フェライトバーアンテナ
- モノラル受信
- 同調ランプ搭載
- 電源:
- DC3V 単3形乾電池×2本(別売)
- 外部電源… DC3V(ACアダプター別売 ※適合プラグ径…内径1.3mm外径3.5mm)
- 乾電池持続時間:
- スピーカー使用時… FM約39時間、AM約46時間、SW約46時間
- イヤホン使用時…FM約50時間、AM約54時間、SW約55時間
- (※アルカリ乾電池新品使用時。JEITA(電子情報技術産業協会)規格による測定値です。)
- 外形寸法:幅117×高さ73×奥行27mm(突起物含まず)
- 横置きタイプ(収納式スタンド搭載)
- 質量:約133g(乾電池含まず)
付属品:イヤホン(モノラル)、ハンドストラップ、取説、保証書 |
取説はメーカーサイトのこちらから見ることができます。
AM/SW/FM共感度良好で乾電池駆動、安価で小型・軽量でもあり、防災ラジオとしてはとても良い製品だと思います。
・外部電源の問題点
本ラジオは外部電源による駆動にも対応しています。
防災ラジオとして使うという観点からもとても良い機能だと思うのですが、ひとつ難点があります。
この外部電源用の端子はDC3Vなのです。
今どきDC5V(USB)が標準的な電圧だと思うので、充電器を使うにしてもモバイルバッテリーを使うにしもてこれは使いづらいですよね。
●外部電源用DCアダプターの作成
という訳で(?)、この外部電源端子をなんとかDC5V(USB)の充電器やモバイルバッテリーで使うDCアダプターを作成することを思いつきました。
・設計方針
- ブロック図
DC5VをDC3Vにドロップさせるだけなのでダイオードを使えば簡単ですね。
外部電源用DCアダプターのブロック図 |
安定性や効率を考えるとICを使っったドロッパ電源やスイッチング電源という手もありますが(ノイズ除去という観点ではドロッパ電源は特に有効ですが)、ここは小型化と信頼性を優先して本回路としました。
- 目標設計仕様(暫定)
本ラジオの外部電源端子は電圧範囲や電流等の電気的な仕様が不明です(取説にも記載されていません)。そこで暫定的に狙う仕様をこんな感じで決めます。
- 入力:USB Type-Aコネクタ [オス]
- 出力:DCプラグ [外形3.5mm, 内径1.3mm]
- 極性:センターマイナス(外側+(DC3V), 内側-(GND))
- 入力電圧:DC5V [USB2.0]
- 出力電圧:DC2.5V~DC3.5V(※1)
- ラジオの電源OFF時:DC3.5V以下
- ラジオの最小出力時(FM放送局非同調時、スピーカ使用、ボリューム最小):DC3.2V程度以下
- ラジオの最大出力時(FM放送局同調時、スピーカー使用、ボリューム最大):DC2.5V程度以上(とにかくラジオが動作すること)
- そのほか:故障しづらい信頼性の高い造りにする(防災ラジオとして使うので)
※1:出力電圧は使う部品やラジオの動作を確認して決めることにします。
・事前検討
- ラジオの消費電流・最低動作電圧・DC3.5Vでの動作の確認
上記したように本ラジオの外部電源端子は電圧範囲や電流等の電気的な仕様が不明です(取説にも記載されていません)。
外部電源端子の電気的仕様の詳細の記載が取説にありません(ラジオの取説より) |
そこで先ずはこれらのラジオの実力を確認してみました。
【ラジオの消費電流】
実際にラジオを外部電源(DC3V)で動かして消費電流を測ってみました。
ラジオの消費電流の測定 |
- ラジオの最小出力時(FM放送局非同調時、スピーカー使用、ボリューム最小):5mA
- ラジオの最大出力時(FM放送局同調時、スピーカー使用、ボリューム最大):平均50mA~100mAぐらい、ピーク200mA程度(※2)
でした。
※2:放送局同調時は音声レベル(声や音楽の音の大小)によって消費電流は変動しますし、DC安定化電源の電流計の精度・時定数等の影響もあるので、平均値・ピーク値ともにあいまいさは残りますが、今回のアダプターを設計する上で消費電流の程度(目安)を知るには十分な測定レベルだと思います。
参考ですが消費電流算出の別法として、本ラジオの仕様『乾電池持続時間:FM約39時間』からラジオの消費電流を推定してみました。
結果は
- 2000mAh(JEITA規定のアルカリ単3電池の容量(最小))÷39時間≒51mA
なので、ここからも今回の測定値(平均50mA~100mAぐらい)は妥当な値だと思います。
【ラジオの最低動作電圧】
DC安定化電源の出力を変えて、本ラジオが動作できる最低電圧を確認してみました。
(条件:ラジオの最大出力時(FM放送局同調時、スピーカー使用、ボリューム最大))
結果は
- ラジオの最低動作電圧:DC2.0V
でした。
これ以上下がると受信できません。結構がんばりますね。乾電池で駆動することを考えるとこんなモノでしょうか。
なので目標仕様で掲げた最低電圧『DC2.5V』はそんなに悪くない電圧かもしれません😋。
【DC3.5Vでのラジオの動作確認】
今回使うラジオ(AudioComm
RAD-H320N)の最大動作電圧は本当は不明(仕様に記載なし)なのですが、乾電池で動作させる事を考えると3.5Vぐらいなら大丈夫(壊れない)だろうという私の個人的な勘所です。
試しに目標仕様に掲げたDC3.5Vでのラジオの動作を確認してみました。
結果は問題なく動作しました。
(ラジオが本当に壊れてしまっては困るのでこれ以上の電圧では動作の確認をしていません😅。)
- 目標設計仕様(最終)
てな訳で出力電圧に関しては設計仕様を再設定します。
- 入力:USB Type-Aコネクタ [オス]
- 出力:DCプラグ [外形3.5mm, 内径1.3mm]
- 極性:センターマイナス(外側+(DC3V), 内側-(GND))
- 入力電圧:DC5V [USB2.0]
- 出力電圧:DC2.0V~DC3.5V
- ラジオの電源OFF時:DC3.5V以下
- ラジオの最小出力時 [5mA]:DC3.2V程度以下
- ラジオの最大出力時 [平均50mA~100mAぐらい、ピーク200mA程度]:DC2.0V以上
- そのほか:故障しづらい信頼性の高い造りにする(防災ラジオとして使うので)
・具体設計(部品の選定)
- ダイオードの選定
手持ちのダイオード(1N4007)なら1A品なので使えそうです。
【ダイオード(1N4007)の電流ー電圧特性】
ラジオの消費電流のピーク値(200mA程度)での本ダイオードのVFをデータシートから読み取ると0.83Vなので、3個使いでも電圧降下は2.49V(=0.83V✕3個)。
なので、アダプターの出力電圧はDC2.5以上は確保できそうですね😋。
手持ちのダイオード(1N4007)のVF-IF特性(データシートより) |
【ダイオード(1N4007)3個直列時の電流ー電圧特性(実測)】
ダイオード(1N4007)の100mA以下の微小電流時の電圧降下は上記データシートからは分からないので、実際に測ってみました。
実測したダイオード(1N4007)3個直列接続時の微小電流時のIF-VF特性 |
この実測値から分かることは:
- ラジオOFF時の供給電圧目標(3.5V以下)を確保できるか?:ダイオードに電流を0.1mA以上流せばOK
- 0.1mA流せばダイオードの降下電圧は約1.5Vなので、ラジオへの供給電圧は5V-1.5V=3.5Vとなり3.5V以上を確保できます
- ラジオ最大動作時の供給電圧目標(2.0V以上)を確保できるか?:このダイオード3個直列の回路でOK
- (ラジオの最大(ピーク)消費電流より大きい)400mA流してもダイオードの降下電圧は約2.5Vなので、ラジオへの供給電圧は5V-2.5V=2.5Vとなり2.0V以上を確保できます
です。
- コンデンサの選定
このコンデンサはUSB充電器などのスイッチング電源で使う時のノイズ除去用です。
取説にも『スイッチング電源は使わないでください』という旨の記載がありますので、このコンデンサは重要だと思います。
外部電源に関する注意事項(ラジオの取説より) |
なので(ラジオの実力確認の時に使った)DC安定化電源(スイッチング電源)で放送を聴いて、乾電池使用時と受信状況を比べてみました。
結果は
- AM:ノイズは増えますが、受信状況に変化はありません
- SW(短波):不明です
- (我が家はスイッチング電源が使える屋内では元々短波放送が入館しないので😅。)
- FM:ノイズ・受信状況に変化はありません
です。
という訳(?)で、ラジオの受信状況にはほとんど問題がなかったので。アダプターには取り敢えず0.1uFを付けることにしました。
今回検討したノイズ・受信状況の具合は充電器のスイッチング周波数等によるので、本件は今後様子をみながら必要があればアップしていきますね😋。
- 抵抗の選定
この抵抗は無くても良いのですが…。ラジオが電源OFF時に壊れる恐れないように(※4)、ラジオに印加する電圧がDC3.5V程度を超えないようにするための、まあオマケみたいなモノです😅。
抵抗値の選定は、使用するダイオードの電圧降下(上記)から決定します。
- (ダイオードの選定時に測定したデータから)ダイオード3個直列時の電圧降下が1.5V以上(=アダプター出力DC3.5V以下)になるのに必要な電流は0.1mA以上
- よってここでは余裕をもって抵抗値は3.3kΩ(ダイオードに流れる電流は約3.5V÷3.3kΩ=1.1mA)とします
※4:既に上記していますが、今回使うラジオ(AudioComm
RAD-H320N)の最大動作電圧は不明(仕様に記載なし)なのですが、乾電池で動作させる事を考えると3.5Vぐらいなら大丈夫だろうという私の個人的な勘所です。
・回路図(決定版)
- 回路図
という訳で完成した(?)回路図はこんな感じです。
外部電源用DCアダプターの回路図 |
- 使用部品リスト
- USB type-Aコネクタ [オス] (CN1):品名・品番不明(手持ちのものを使いました)
- DCプラグ(CN2):uxcell DC電源コネクタ 3.5x1.35 mm
- ラジオの外部電源端子の仕様は外形3.5mm, 内径1.3mmなんですが、部品を探していくと外形3.5mm, 内径1.35mmのモノばかりなんですよね。とりあえず使えたので良いのですが、どちらが正しいんですかね🤔?DCジャック/プラグって規格がありすぎて難しいですよね😅。
- ダイオード(D1, D2. D3):1N4007 [1A/700V](耐圧は5V程度以上ならOK)
- コンデンサ(C1):0.1uF(耐圧は5V程度以上ならOK)
- 抵抗(R1):3.3kΩ(電力は10mW程度以上ならOK)
- 線材:ELPA HK-WW12H(電流は100mA程度以上ならOK。長さは使い勝手を考えて30cmぐらいとしました。)
- 熱収縮チューブ:SummitLink 410個 熱収縮チューブ(少々😅)
- 絶縁接着剤:KE45-100TM(少々)
今回作成するDCアダプターの使用部品 |
・アダプターの実際の作成
作成するアダプターの信頼性の向上(故障しづらい)のためにも、部品は全てUSBプラグとDCプラグの中に納めたいので頑張ってみました。
- ダイオード・コンデンサ・抵抗のUSBコネクタ・DCプラグ内への実装
ダイオードはUSBコネクタの中に、コンデンサ・抵抗はDCプラグの中になんとか収まりました。
DCプラグの極性(センターマイナス)にはくれぐれも気をつけて! |
USBコネクタ・DCプラグともにとても窮屈ですがなんとか収まりました。
- 仕上げ
最後は窮屈なUSBコネクタ・DCプラグ内で絶縁を確保するためと、断線しづくなるようにコネクタ・プラグ内は柔らかい絶縁接着剤(KE45-100TM)を充填します。
DCアダプター完成~! |
●使用感
実際にUSB充電器&モバイルバッテリーと今回作成したDCアダプターでラジオを使ってみました。
・DCアダプターの給電電圧の変動・ラジオの実動作
ラジオの動作中の本DCアダプターの給電電圧の変動およびラジオの実動作を確認してみました。
- 給電電圧の変動
以下はUSB充電器(45W)を使用した時の測定値です。
- ラジオの電源OFF時:DC3.08V [設計目標(3.5V以下)通り🆗)
- ラジオの最小出力時:DC2.56V [設計目標(3.2V以下)通り🆗)
- (FM放送局非同調時、スピーカ使用、ボリューム最小)[5mA]
- ラジオの最大出力時:平均DC2.45Vぐらい、最小DC2.35Vぐらい [設計目標(2.0V以上)通り🆗)
- (FM放送局同調時、スピーカー使用、ボリューム最大)[平均50mA~100mAぐらい、ピーク200mA程度]
狙い通りの電圧となりました。
- ラジオの実動作
実際のラジオの動作状態は
- USB充電器(45W)使用時:
- ラジオの最大出力時の音声のピーク時にLED(同調・FM(or AM SW))が消えることがあり音が歪みますが、ラジオの受信が停止することはありません
- モバイルバッテリー(USB PD対応)使用時:
- ラジオの最大出力時にもLEDが消えることや音が歪みはありません。もちろんラジオの受信にも影響はありません
で良好です。
(モバイルバッテリーでの動作の安定感を考えると、私の使っているUSB充電器は急激な負荷変動に弱いようですね😅。)
・USB充電器・モバイルバッテリーのスイッチングノイズの影響
USB充電器・モバイルバッテリーのノイズ影響を確認してみました。
(今回使用したモバイルバッテリーはUSB
PD対応なのでスイッチング電源を内蔵しています。)
結果は
- AM:ノイズは増え、受信状況も多少悪くなりますね。
- SW(短波):不明です
- (我が家はスイッチング電源が使える屋内では元々短波放送が入館しないので😅。)
- FM:ノイズ・受信状況に変化はありません
です。
●改善したい?点
- USB充電器を使ってのラジオの最大出力時のLED消灯と音の歪みはちょっと気になるので、ラジオへの給電電圧はもうちょっと上げても良いかもしれません(=ダイオードの数は2個にする。or 3個のダイオードのうち1個はショットキーダイオードにする)。
- 電源のスイッチングノイズの影響を低減するために、コンデンサの容量を検討するとか、レギュレータICを使ったドロッパ電源の方が良いかなぁ?とか思いますが、場所食うしなぁ😅。
●まとめ
安価にアダプターを作成でき、USB充電器やモバイルバッテリーで我が家の防災用ラジオを使えるようになりました♪
ちょろっと作るつもりのアダプターでしたが結構真面目になってしまって、本記事も超大作になってしまいました😅。
こんなに頑張って作ったのに、当分使わないんだろうなぁ🤣。
本記事の内容について私(筆者)および本ブログは一切の責任を負いません。参考にされる方は全て自己責任にてお願いします。
○【おまけ】USB Type-C変換プラグ
最近のUSB充電器やモバイルバッテリーはUSB
Type-C出力のものが増えてきましたよね。
そこで今回制作したアダプターの入力をUSB
Type-Cに変換するプラグを本アダプターと組み合わせて使うことにしました。
モノはコレです。
USB Type-C→USB Type-A変換プラグ |
これがあれば安心ですね😋。
100均(Seria)で110円でした。
・主な製品仕様(本体パッケージより)
- 電圧・電流:5V 3A
- 材質:PVC
- そのほか
- USB規格:USB2.0
- USBホスト機能(OTG機能):非対応
- USB PD(Power Delivery):非対応
- 充電:Type-Cコネクタ側にACアダプター等を繋いだ場合のみ使用可能
USB Type-C→USB Type-A変換プラグ(パッケージ裏面) |
実際に使ってみましたが、もちろん動作は良好です😋。
これが本当の完成形😋!?(ケーブルバンドも付けてみました♪) |
いつも思うのですが、この手の変換プラグ(アダプター)って紛失防止用にストラップホールが欲しいのですが、付けてくれないかなぁ。樹脂って工作が難しいし。