超小型で場所もとらず、スマホやPCと接続して波形を測定できるポケットオシロスコープ(POS-4)。充実の4ch装備で自作でのちょっとした波形確認にはもってこいです。
ポケットサイズオシロスコープ(POS-4) 4ch 同時測定 が可能な軽量 コンパクトサイズ オシロスコープ (ホワイト) - Amazon |
(製品仕様についてはこちら(メーカー製品ページ)を参照ください。)
なのですが、このオシロには改善したい点が3つあります:
- 付属の専用プローブが短い(20cm)
- 測定電圧範囲が狭い(±30Vまで)
- AC1次側(AC100V)の測定はできない(絶縁されていない)
そこで今回はこれらの改善を試みたので紹介します(今回はちょっと【失敗談】もあります😅)。
本記事の内容について私(筆者)および本ブログは一切の責任を負いません。参考にされる方は全て自己責任にてお願いします。
■ポケットオシロスコープの改善を試みる
●課題の改善案:変換基板
・プローブ長・測定電圧範囲の改善案
プローブ長・測定電圧範囲の2つの課題を解決するのはコレです。オシロスコープ用のプローブ(10:1) |
通常のオシロ用の10:1プローブです。これを使えばプローブ長も測定電圧範囲も一挙解決ですね♪今ドキ帯域幅が100MHz程度で良ければ1000円以下で買うことができます。
今回はこの変換基板を作成することにしました。
・AC100Vの波形測定の対応案
電源のON/OFFするタイミングなどのAC1次側の波形の確認はしたい所です。ですが、ポケットオシロスコープ(POS-4)のグランド(GND)は接続するスマホやPCのグランド(GND)と絶縁されていない(繋がっている)ので、AC1次側の測定はできません。
探してみると安価な小型の電源トランスをみつけました。
豊澄電源機器 電源トランス HPシリーズ P/ハンダ付けピン端子タイプ HP-126 - Amazon |
トランスのメーカー製品ページを見てみると
- 単相 複巻 50/60Hz
- 耐電圧 AC1.5kV(2次-鉄心間0.5kV)
- 適用規格 JIS C-6436
- 全機種A種絶縁(温度上昇60℃以下)
- 出力センタータップ方式
- RoHS指令対象10物質非含有
です。電圧比が100:12なのでポケットオシロスコープ(入力電圧:±30V)でAC100Vの波形が測定可能です。絶縁をしたいという今回の用途には向いていると思います。
本トランスは電源用なので周波数特性は不明(そもそもデータが無い😅)ですが、50Hz/60Hzの波形観測をしたいという目的には十分だと思います(経験上、周波数特性はあまり良くないと思います。スイッチング電源の1次側波形の観測にはかなり不安です…😅)。
絶縁用トランスの2次巻線にかかる電圧はAC12V(14.1Vpeak)程度ですがAC1次側の絶縁破壊(ショート)は恐いので、安心のため(=PCを壊さないため)にAC100Vを測定する時はデスクトップPCは使わずに、充電器を接続していない(=大地から浮いている)スマホやタブレットを使う事にします。
●変換基板の作成
・使用する部品
- ポケットオシロ(POS-4)側端子:
GNDとそれ以外の端子では色を変えようと思っています。
☆(基板設計のための)大きさは直径3mmぐらいです。
- 10:1プローブ側コネクタ:
はんだ付け用のGND端子(4本)がBNCコネクタ部と一体になっている部品なので、メカ的な強度は稼げそうですが、はんだ付けする時はだいぶ温めないとダメそうですね。
☆(基板設計のための)大きさは直径10mmぐらいです。
- AC00Vの波形測定用絶縁トランス:
(詳細な部品仕様はこちら(メーカーの仕様書より)です。)
同じ豊澄電源機器のラインナップとして一回り小型のタイプもありますが、今回はAmazonで安価に入手が可能だったこのトランスを選択しました。
☆(基板設計のための)大きさは35mm*29mmです。
・基板の設計
- 基板に必要な大きさの算出:
変換基板は上記部品の大きさを考慮しつつ、10:1プローブの付け外しがし易いようにBNCコネクタは間隔を十分に確保(30mm)します(30mmの間隔は一般的なオシロを測ってみて決めた数値です)。
そこから決めた基板サイズは、
部品実装部分:幅105mm*奥行き65mm
⇒ 基板の脚取り付け部分を含めると:幅120mm*奥行き80mmぐらいあると安心
です。
ユニバーサル基板(120mm*90mm) |
- レイアウト案:
レイアウトはこんな感じです。BNCコネクタの間隔は30mmを確保するようにしました。
変換基板のレイアウト案 (電気屋の私が引くメカ図面はかなりいい加減😅) |
BNCコネクタの間隔を狭めればもう1サイズ小さい基板(95mm*72mm)でも作れそうな気もしますが、ここは無理をせずにこの基板で作ることにします。
・作成した変換基板
使用したユニバーサル基板は2.54mmピッチですが、残念ながら今回使用するBNCコネクタの端子ピッチは2.54mmではありません。基板の事前加工はがんばりが必要ですね😅。
完成した変換基板 |
不器用で工作ベタな私としてはよく出来た方だと思います😅。BNCコネクタも4本のGND端子全てをはんだ付けすることによって十分な強度が確保できていると思います(はんだ付け自体も我が家のハンダごて(40W)で難なくできました)。
トランスははんだ付けだけでは取付強度が不安だったので、グルーガンで補強しています(まあ、気持ち程度ですが😋)。
『AC1次側の異極(L-N)間』と『AC1次-2次間』は共に7mm以上の距離を確保しています |
また基板裏面も予期せぬショートを防止するためにプラスチックシートを貼っています。
(配線は全て裏面で完結できるので片面基板の方が表面での予期せぬショートを防げて良いかもしれません(ランドの削り取りも楽ですし😅)。)
材料費の合計は2000円ぐらいだと思います(トランスとユニバーサル基板が意外と高かったので😅)。
【おまけ】
(使い途はありませんが😅)トランス2次側の使わない方の12V出力にもポケットオシロ接続用のチェック端子を付けてみました(上の写真の右上(小さな白いタックシール近辺)です)。
トランス部品仕様書より |
何に使おう😅?
●作成した変換基板の使用感
・プローブ長
良好です♪プローブが変換基板に縦挿しなので基板が傾かないか心配でしたが、トランスがそこそこ重たい(80g)ので基板は安定しています。
・測定電圧範囲
以下は1kHzの信号を実際に測定した波形です。
- CH1(黄):ポケットオシロスコープで直接測定
- CH2(緑):変換基板と10:1プローブを介して測定
10:1プローブを使うことによって測定電圧は1/10になる筈だったのですが…。
測定例:1kHz(プローブ倍率10:1(✕10)) (ポケットオシロ(POS-4)にはプローブ倍率を選択する機能が無いのでCH2の表示値は変換基板を通った後のモノです。) |
減衰率は1/4(4:1)程度。しかも位相もズレてます😥(波形観測のオシロで1kHzで位相がズレてしまうのは困りものです)。
この原因はポケットオシロの入力インピーダンスの影響なのですが、現時点で解決策は見つかっていません。
今しばらくはプローブ倍率1:1(✕1)で本変換基板を使うことにします(プローブ長が伸びたというメリットはあるので😋)。
本件は解決策がみつかったらアップしますね😅。
・AC100Vの波形測定
(オシロを使う前の事前測定として)テスターでコンセントのAC100Vを本変換基板のトランスを使って測定したところ、トランス1次側/2次側間の減衰量は17.3dBでした。
実際にポケットオシロで測っているのはトランスの2次側のAC14.2Vです。波形がひずんでいますがコンセントのAC100Vってこんなものです。
波形観測という観点では十分ですね。
絶縁しているので、2次側回路との同時測定も可能ですよ♪
測定例をもうひとつ。(以前紹介した)トライアック(サイリスタ)を使用した自作のはんだごて温度調節器(AC電圧調節器)の出力を測るとこんな感じです。
はんだごて温度調節器の出力電圧 (テスターでの電圧測定値は、変換基板のトランス1次側:AC57.5V。トランス2次側:AC7.8V) |
トライアックの位相制御動作の波形がキレイに観測できていますね😋。
【おまけ】
(位相制御である)トライアック(サイリスタ)の出力は上図の通り波高値が変わらないので、実験用のAC電圧調節器という観点ではやっぱりスライダック(変圧器)が欲しいなぁ😋と思います(高価だし、場所を取るので買えませんが😅)。
【おまけ】10:1プローブの色分け(マーカーリング)
オシロのプローブの色分け用のマーカーリングとして良いものを見つけました。
ファンルーム シリコンバンド スタンダードカラー - Amazon |
これなら安いし(473円)、何度切れても無くなっても大丈夫です😋。
我が家の場所を取らない格安自作環境は着々と整いつつあります😋。
再記しますが、本記事の内容について私(筆者)および本ブログは一切の責任を負いません。参考にされる方は全て自己責任にてお願いします。